世界中に独創的な時計メーカーやハイジュエラーは数多くあれど、Dior Timepieces (ディオール タイムピーシズ) ほどクチュールの世界観を表現するメゾンはほかに無いだろう。一着のドレスで世界を変えたムッシュ・ディオールの DNA を現代に受け継ぐクリエイションは、時に優美なウエストラインを描くバージャケットのように繊細に、そして時にフロアレングスのソワレのように大胆不適。そして3月にスイスにて開催されたバーゼルワールド2016では、人気のアイコンウォッチをドラマティックに再解釈したモデルや、ファインアートさながらの美麗さを極めたユニークピースが発表された。
Dior (ディオール) のメゾンがオープンした1946年の10月8日、デビューコレクションのタイトル「En Huit (オン・ユィット)」、そして彼が自らのアトリエを構えたパリの住所、アヴェニュー・モンテーニュの8区。メゾンにおけるラッキーナンバー、「ユィット (フランス語で8)」を冠した「Dior VIII (ディオール ユィット)」は、言わば Dior Timepieces (ディオール タイムピーシズ) における真っ白なキャンバスだと言えるだろう。
そのシンプリシティを極めたラウンドシェイプには、ファッションデザイナーとして時代を築いたムッシュ・ディオールが、その一方で建築家になることを長年夢見ていたというストーリーにも通ずるフォルム美学が詰まっている。そして今回、バーゼルワールド2016において新たに登場した「Dior VIII Grand Bal (ディオール ユィット グランバル)」では、キャンバスの上をラッカー、フェザー、そしてプレシャスストーンが繰り広げる絢爛な世界観を創り出している。
中でも注目は、ダンスに着想を得て製作された「ディオール ユィット グランバル カンカン」。ピンクゴールドとダイヤモンドが優美な輝きを讃えるダイヤルの上には可動式のローターが配され、さらにその上には色とりどりのフェザーが渦巻き状にあしらわれている。高度な技術を要する象嵌技巧である「マルケトリ」によってダイヤル上を浮遊するフェザー装飾は、さながらロートレックの描くカンカンダンサーのようなデカダンな舞いを見せる。
構築的なフォルム、モダニティ、シルエット美学。「ディオール ユィット」が継承するこれらのメゾンコードを大胆な創造性によって打ち破った新作モデル、「Dior VIII Grand Bal Ondine (ディオール ユィット グランバル オンディーヌ)」。ブルー、ピンク、そしてイエローサファイア、ツァボライトガーネット、ホワイトダイヤモンド、そしてアメジストなど色とりどりのプレシャスストーンをスノーセッティングであしらったダイヤル。その上を自在に動き回るローターは、まるで液体を流し込んだようなフリューイッドな質感を湛えている。流れるようなラインと予測不可能な動きのあるデザイン、そして類稀なる輝き。オートクチュールのサヴォアフェールを礼賛するハイジュエリーウォッチ、「ディオール ユィット グランバル オンディーヌ」は全12点、それぞれ世界で1本だけのユニークピースだ。