活発な男はシャネルを愛する──先鋭化し続ける「J12」コレクション

衝撃のデビューから14年。素材も機能もバリエーションを増やした「J12」コレクションは、活発に行動する男性をより魅力的に演出する。

写真: 新倉哲也(SIGNO) 文: 福留亮司

CHANEL
J12 42MM
マットに仕上げられたブラック セラミック。
「J12」コレクションのなかでも、最もシンプルな1本。自動巻きムーブメントは、約42時間のパワーリザーブを実現。深みのあるブラックにマット仕上げを施したハイテク セラミックを使用したケースは、堅牢で、防水性能は200m。ロジウム仕上げの数字と針がハッキリと浮き上がっている。とても視認性のいい腕時計だ。ベゼルは逆回転防止となっている。SS+ハイテク セラミックケース、じどうまき、42mm径。

 

固定観念を「J12」は取っ払ってみせた。

20世紀のモード界を名実ともに牽引したシャネル。時計については、1987年に発表された女性用腕時計「プルミエール」が最初のモデルである。その後、いくつかのコレクションを発表したのち、時計界に大きな足跡を残す「J12」が誕生する。

2000年に登場したシャネル初のメンズモデルは、自動巻きムーブメントを搭載した機械式腕時計だった。しかもセラミックのケースとブレスレットを採用した先進のスタイル。そのモデル名「J12」がヨットレースの最高峰アメリカズカップにかつてあったカテゴリー“クラスJ”に由来することから、ダイバーズ的な精悍さももち合わせていた。機械式ムーブメントを載せた伝統的な構造と印象的なデザイン、それに先進のハイテク セラミックが融合した新しい腕時計は、その後の時計界に影響を与えることになる。

それまでの高級腕時計の色といえば、シルバーもしくはゴールドが定番。そこへブラック、ホワイトという新しい時計の色が加わったのである。さらに、傷が付きにくく劣化もしにくいという扱いやすさも加わり、このファッション性を備えた本格実用時計に注目が集まることとなった。

ガブリエル シャネルが女性服からコルセットを外し制約を解放したように、伝統を重んじる高級腕時計から色や素材への固定観念を「J12」は取っ払ってみせたのだ。

 

 

転載サイト:https://gqjapan.jp/watch/news/20140424/j12-ceramic-beauty

想像以上に真面目 シャネル J12 スーパーレッジェーラ

J12 スーパーレッジェーラ ブラック
黒いマットなセラミック製のケースとブレスレットをもつクロノグラフ。モダンに見えるが、デザインの構成要素は、すべて50年代の高性能車や古典的なクロノグラフに倣ったものだ。この時計が、目新しいが奇抜に見えない理由だろう。じどう巻き。ハイテク セラミックケース×ブレスレット(直径41mm)。200m防水。99万5000円(税別)(問)シャネル(時計・宝飾) 0120-159-559。

シャネルが時計を作っているのは皆さんもご存じだと思う。では時計の出来はどうなのか。これが大変にいいのである。筆者は、かつて「時計を買うなら時計メーカーの時計」と言ってきたし、それはおおむね間違っていない。しかし最近、シャネルなどの「非専業メーカー」は大変に良い時計を作るようになった。筆者は、かつてのシャネルの時計には多少懐疑的だ。しかし最近のモデルは、どれも完成度が高い。とりわけ文字盤の出来と着け心地に関して言えば、時計メーカーが作る大多数のモデルを超えているように思う。

 好例が、セラミックケースのJ12だろう。2004年に発表されたこの時計は、時計業界にセラミックブームを巻き起こした立役者だ。発表当時の色は黒。後に白が加わった。ではなぜ、2色を同時に発表しなかったのか。理由は、質に満足できなかったため、と聞いた。時計に使われるセラミック素材は「つなぎ」として樹脂を使う。これは便利だがやっかいな代物で、紫外線を浴びると退色してしまう。黒いセラミックなら問題はない。しかし白いセラミックは、たちまち黄ばんでしまう。そこでシャネルは、時間を費やして、退色しない白いセラミックを開発した。そういうことをやっているのに、いちいち説明しないシャネルという会社の姿勢は、とても気に入っている。

 個人的に、J12はどれも好きだが、ひとつ選ぶならクロノグラフの「スーパーレッジェーラ」だ。黒いセラミックケースや、強い筋目仕上げを施した針やインデックスは、この時計をモダンに見せる。しかしインデックスのアラビア数字や、ふたつの大きなインダイヤルなどは、1940年代から50年代のクロノグラフそのままだ。そう、シャネルは古典的なデザインをふまえて、このモダンなクロノグラフを作り上げたのである。さじ加減の巧みさは、さすがクチュリエと言うほかない。

 面白いのは針の長さだ。普通、クロノグラフは針を長くする。しかしシャネルはあえて針を短くした。3針モデルの針が短いのに合わせたのだろう。ただし長さに対して無頓着でない証拠に、クロノグラフ針と長針は、インデックスの外周と完全に重なっている。針が短い時計は個人的に好みでないが、ここまでそろえた上で、あえて短くしているのだから、これはデザインとして許容できよう。シャネルはあえて、短く切ったのである。

 ケースの厚みは12.7mm。個人的にはもう少し薄い方が好きだが、その厚みを逆手にとって、文字盤を立体的に成形したのもシャネルらしい。加えて文字盤に複数の仕上げを盛り込むことで、立体感を一層強調している。同じ黒でもニュアンスを変える手法は、もともとシャネルが服の世界でやってきたことだが、それを時計でもやるようになったのである。その巧みさは、とても時計メーカーの及ぶところではない。

 価格は税別で約100万円。安くはないが、筆者はこの時計がとても好きだ。軽くて装着感が良く、デザインは伊達だし、セラミックケースや文字盤の仕立ても優秀だ。「時計は専門メーカーの物がいい」。確かにその通り。ただしそう言う人にこそ、シャネルのJ12は見て欲しい。